【門前薬局とは?】特徴や将来性、働くメリット・デメリットを徹底解説

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病院やクリニックの近辺で見かける薬局のことを「門前薬局」と言います。身近にありますが、門前薬局の具体的な役割については意外と知られていません。

この記事では、門前薬局の特徴や将来性、働くメリット・デメリットについて解説します。記事を読めば、門前薬局について理解でき、自分に合っているかわかります。

目次

門前薬局とは病院やクリニックのすぐそばに位置する薬局のこと

主に処方箋に基づいた調剤を行い、患者さんに提供するのが門前薬局の役割です。

門前薬局について、以下の2点を解説します。

  • 門前薬局の役割
  • 門前薬局と他の薬局の違い

門前薬局の役割

門前薬局は医療機関の近くに位置しており、患者さんにとって身近な健康支援の場です。

門前薬局の役割は、以下のとおりです。

  • 対面での服薬指導と薬の効果・副作用についての情報提供
  • 処方箋に基づく医薬品の調剤と管理
  • 患者さんの健康状態や服薬状況のモニタリング
  • 患者さんのアドヒアランス(服薬遵守)の支援
  • 疾患や健康に関する一般的な相談への対応
  • 医師や他の医療スタッフとの連携と情報交換
  • 長期にわたる患者ケアと継続的なフォローアップ
  • 地域社会における健康教育と予防医学の推進

薬の使い方や効果をわかりやすく説明したり疑問に答えたりすることで、安心して服薬できるように支援します。地域社会における健康や薬に関する教育や普及活動も、門前薬局の役割です。
» 調剤の仕事の流れを解説
» 服薬指導の方法を解説

門前薬局と他の薬局の違い

他の薬局と門前薬局は、立地と役割が異なります。門前薬局を利用する患者さんは、付近の病院やクリニックからの処方箋を持って直接訪れます。病院やクリニックと密接に連携し、調剤に特化している点が特徴です。門前薬局は患者さんのフォローアップや、服薬指導に注力している点も違いとして挙げられます。

在宅医療への参加や、健康相談などを行っている門前薬局も多いです。市販薬(OTC薬)の取り扱いは、少ない傾向です。医薬品以外に、健康関連商品の販売を行う門前薬局もあります。門前薬局は、他の薬局にはない特化したサービスを提供しているのが特徴です。

門前薬局の分業形態

門前薬局における分業形態は、地域のニーズや運営方針によって異なります。

分業形態は、以下の2つです。

  • 点分業
  • 面分業

点分業

点分業は、調剤と販売をわけて業務を行う方式です。処方箋に記載された薬をピッキング、分包する業務に特化します。点分業は、調剤過程の効率化を目的に導入されることが多いです。点分業を採用すると、調剤過程の迅速化や正確性の向上が期待されます。作業に集中しやすいため、誤薬防止など安全性の担保にも効果的です。

他職種との業務分担による連携を重視するのも特徴です。点分業は業務効率を高めるだけでなく、サービスの質を向上させる効果もあります。

面分業

面分業は処方箋ごとに担当薬剤師を決め、1人で全工程を行う方式です。薬剤師は処方箋ごとに責任を持ち、患者さんのアレルギーや服薬歴を把握しやすいメリットがあります。患者さんごとに薬剤師が丁寧に対応でき、質の高い医療サービスを提供できます。

患者さんとのコミュニケーションが密に取れ、信頼関係を築きやすいのもメリットです。一方で、薬剤師1人当たりの業務負担が増えやすいのがデメリットです。ミスを防ぐためには、高い専門知識と注意力が求められます。面分業はタスクが多岐にわたるため、薬剤師のスキルアップには適しています。

門前薬局で働くメリット

門前薬局で働くメリットは、以下のとおりです。

  • 裁量が大きい
  • 定時で終わることが多い
  • 患者さんとの距離が近い
  • 幅広い知識を習得しやすい

裁量が大きい

門前薬局で働く薬剤師には、自分の裁量で仕事を進めやすいメリットがあります。医師と連携し治療方針に合わせた処方箋調剤や薬剤管理を行うのが、主な業務です。患者さん1人ひとりのニーズに合わせた、服薬指導や健康管理を提案できます。

新しいサービスや健康支援プログラムの提案や、実施に関する裁量が大きいのも特徴です。自身のアイディアを活かして業務に取り組めます。門前薬局での仕事は、責任感とやりがいを感じられる環境が整っています。

定時で終わることが多い

定時で終わることが多いのも、門前薬局で働くメリットのひとつです。ワークライフバランスを保ちやすく、プライベートも充実させられます。門前薬局は、忙しい日と閑散日の差が少ないのも特徴です。生活リズムが安定しやすくなり、身体的・精神的ストレスも少なくなります。休日出勤が少ないのも、門前薬局で働くメリットです。

門前薬局は育児や介護などと両立しながら働きたい方にとって、魅力の大きい職場です。

患者さんとの距離が近い

門前薬局で働くと、患者さんとの距離が近くなります。患者さんは、同じ医療機関の処方箋を持って来ることが多く、自然と顔見知りになるからです。繰り返し来局することで、患者さんの健康状態や家族構成などを深く理解できます。個々に合わせた服薬指導やアドバイスなど、質の高い薬局サービスを提供しやすくなります。

患者さんの病状の変化に気づきやすく、迅速に対応しやすいのもメリットです。信頼関係を構築しやすく、個人的な相談を受ける機会も増えます。地域のコミュニティに密接に関わり、地域医療に貢献しやすくなります。

幅広い知識を習得しやすい

門前薬局で働くと、幅広い知識を習得しやすいのもメリットです。服薬歴や既往歴を確認する過程で、さまざまな疾患や薬剤に関する知識を習得可能です。患者さんからの服薬指導や相談を受ける中で、コミュニケーション能力や対応力も鍛えられます。病院との密接な連携により、医療全般に関する知見が広がります。

幅広い知識の習得は、薬剤師としてのキャリア形成において重要な要素です。

門前薬局で働くデメリット

門前薬局で働くのはメリットだけではなく、以下のデメリットもあります。

  • 業務の負担が大きい
  • 人間関係が閉鎖的になる
  • 処方箋の知識が偏る

業務の負担が大きい

門前薬局の仕事は高度な専門知識を要求されるため、薬剤師にとって負担が大きいです。医師の処方箋や患者さんに対して、迅速に対応する必要があります。誤薬や人物誤認などを防ぐために、薬剤師は細心の注意を払わなくてはなりません。調剤される薬が多い場合、業務負担は増大します。

在庫管理や薬歴管理など、管理業務が多いのも負担を大きくする原因です。医師や患者さんとの間に発生した問題を、解決する必要もあります。長時間の立ち仕事による、体力的な負担も無視できません。

人間関係が閉鎖的になる

門前薬局の人間関係は、閉鎖的になりやすいです。小規模でスタッフ数が少ないため、長時間同じメンバーと働くことになります。新しい人間関係を築きにくく、コミュニケーションの相手が限られる傾向です。職場外での交流が少なくなり、新鮮な刺激や情報を入手しにくくなります。

小さなトラブルが、大きな問題に発展するリスクも高いです。病院やクリニックと密接な関係になりやすく、特定の医師や患者さんとの人間関係に依存する場合もあります。

処方箋の知識が偏る

門前薬局で働くと、限られた薬剤の知識に偏る傾向があります。特定の病院やクリニックによる処方箋を扱うことが多いためです。特定の疾患や治療に関する薬剤には習熟しますが、幅広い知識は得にくくなります。他の薬局で働くより、市販薬や一般用医薬品に関する知識が不足しやすいのもデメリットです。

幅広い薬剤に関する知識を習得するには、自ら積極的に勉強したり研修に参加したりする姿勢が求められます。

門前薬局がなくなると言われている理由

門前薬局は減少し、いずれなくなるとも言われています。

門前薬局がなくなると言われている理由は、以下のとおりです。

  • 慢性的に薬剤師が不足している
  • インターネットで必要な情報を得られる
  • 収益性が低下している

慢性的に薬剤師が不足している

世界中で薬剤師不足が問題となっており、日本も例外ではありません。高齢化社会で薬剤師の需要は高まっているものの、就業者は不足しています。都市部へ人材が流出しており、地方での薬剤師不足は深刻です。薬学部の定員増や留学生受け入れなどの対策を行っても、実務研修不足や離職率が高い状況が続いています。

待遇面やワークライフバランスへの不満も、薬剤師不足の原因です。産休・育休後の復職率が低いことも、問題を深刻化させています。慢性的な薬剤師不足により、門前薬局はさらなる人材不足に見舞われると予測されます。

インターネットで必要な情報を得られる

門前薬局を利用しなくても、患者さんが医薬品情報や治療法を調べやすくなったのも理由のひとつです。オンライン診療や遠隔地で薬を受け取れるサービスにより、門前薬局を利用する必要がなくなっています。処方箋薬のオンライン販売も、需要が低下している原因です。

健康管理をサポートするアプリや、プラットフォームが普及したことも影響しています。患者が日々の体調変化を記録し、必要に応じて医師や専門家に相談できるからです。自宅で利用できる自己管理や自己診断ツールも増えており、門前薬局に相談する必要性が薄れています。

インターネット上のコミュニティやフォーラムでは、患者さん同士が経験や情報を共有可能です。患者さんが症状や病気に関する情報や、セカンドオピニオンを求めることが容易になったのも影響しています。

収益性が低下している

門前薬局の収益性が低下している理由は、以下のとおりです。

  • 処方箋薬局の競争が激化している
  • 薬価の引き下げがある
  • ジェネリック医薬品の普及が進んでいる
  • 保険薬局規制が強化されている
  • 調剤報酬の改定による影響がある
  • 在宅医療へのシフトが進んでいる
  • 電子処方箋の導入によりコストが増大している
  • 医薬分業で一般薬の取り扱いが縮小している

門前薬局が生き残るためには、現在のビジネスモデルを見直さなくてはなりません。新たなサービスの提供や業務効率化など、変化に対応する戦略が求められます。

門前薬局が生き残る方法

門前薬局が生き残るためには、地域社会における存在感を高める必要があります。相談サービスや健康食品の取り扱い、在宅医療への対応など付加価値を増やすことが有効です。

健康相談や介護相談もできるようにする

健康相談や介護相談の提供で、地域社会における存在感を高められます。専門知識を活かして、地域住民の健康サポートを強化するのに効果的です。門前薬局は医薬品の販売場所を超えた、信頼できるパートナーになれます。介護に関するさまざまな悩みに対応するのも、門前薬局が生き残る方法のひとつです。

高齢者や家族のニーズに応えることで、長期的な顧客関係を築けます。門前薬局は地域の医療機関や介護施設と連携し、トータルケアの提供を目指します。健康チェックやヘルスケアイベントを通じて、集客するのも効果的です。

健康食品を販売する

健康に対する関心が高まっており、健康食品の需要は増加しています。薬剤師の専門知識を活かせば、健康ニーズに応える商品を提供できます。個々の健康課題に対応したアドバイスは、信頼関係を築くのにも効果的です。健康食品の販売は、薬局にとって新たな収益源となり、経営も安定しやすくなります。

健康食品に関するセミナーやイベントを開催するのも、新たな集客に効果的です。地域社会やヘルスケアに関係する企業と連携すれば、新たな商品販売やサービスを提供しやすくなります。

在宅対応可能な薬局にする

在宅訪問サービスを提供するのも、門前薬局の需要を高める方法です。在宅ケアを支援する取り組みを通して、門前薬局の役割を拡大できます。
» 在宅医療の薬剤師とは?業務内容を解説!

門前薬局が提供可能な在宅サービスは、以下のとおりです。

  • 患者さんの自宅に直接薬を届ける
  • 在宅患者さん向けの薬剤管理支援や指導を行う
  • 生活環境やニーズに合わせた個別の服薬指導を行う
  • 電話やオンラインで処方箋を受付する
  • 相談に対応するシステムを導入する
  • 在宅医療チームと連携し、総合的な医療サポートを提供する
  • 健康管理支援ツールを提供する
  • 地域や自治体と協力して支援する

在宅対応可能な薬局になれば、より幅広い患者さんのニーズに応えられます。
» 居宅療養管理指導薬局とは?概要と重要性について詳しく解説
» 薬剤師訪問サービスとは?サービス内容や料金を詳しく解説

まとめ

門前薬局は、病院やクリニックの近くに位置する薬局です。患者さんに対して、迅速な薬剤提供とアドバイスを行うのが主な役割です。門前薬局で働くことは、裁量の広さや定時で帰りやすいメリットがあります。一方で、業務負担の大きさや、人間関係が閉鎖的になりやすいデメリットもあります。

薬剤師不足や収益性低下などの理由で、門前薬局の将来性に不安を感じる人は多いです。生き残るためには、他の薬局との差別化が求められています。門前薬局が地域医療に役立つ存在であり続けるためには、変化への適応と進化が不可欠です。
» 薬剤師の仕事内容と働き方を解説

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