薬剤師の年収は低すぎる？上がりにくい理由と年収アップする方法を解説！

薬剤師の年収について「低すぎる」と感じている方は多いです。6年制大学を卒業し、国家資格を取得した専門職なのに、なぜ年収が低いと感じるのでしょうか。この記事では、薬剤師の年収が低いと言われる理由を深掘りし、実際の平均年収や年収アップの方法を詳しく解説します。

薬剤師の方が抱える年収への不満や疑問を解消し、今後のキャリアプランを考える上で役立つ情報をお届けします。年収アップを目指す方や、薬剤師を目指す学生の方にも参考になる内容となっているので、ぜひ最後までお読みください。

薬剤師の年収が低すぎると言われる理由

薬剤師の年収が低すぎると言われる背景には、複数の要因があります。給料が上がりにくい構造や他の医療職との比較、職場や地域による差など、さまざまな観点から見ることが必要です。薬剤師の年収が低いと感じられる主な理由を6つ挙げて、詳しく解説します。

昇給率が低く給料が上がりにくい

薬剤師の給料が上がりにくい背景には、業界特有の構造があります。多くの薬剤師が直面するのが、昇給率の低さです。一般的な企業の平均昇給率が2%程度であるのに対し、薬剤師の場合は1%前後にとどまります。

経験年数が増えても給与の上昇幅が少ないことも給料が上がらない大きな要因です。入社5年目と10年目の薬剤師の給与差が月額1万円程度しかないケースもあります。管理職への昇格機会が少ないことも、大幅な給与アップを難しくしています。業界の競争激化や薬価の引き下げによる経営圧迫なども、給与抑制の要因です。

医師や歯科医師よりも年収が低い

薬剤師の年収が低いと感じる大きな理由の一つに、医師や歯科医師との比較があります。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は583.4万円です。一方、医師の平均年収は1428.8万円、歯科医師は810.4万円になっています。

仕事の性質や責任の違いから大きな差が生じています。医師は直接的な診断や治療を行い、患者の生命に関わる重大な判断を下す立場です。一方、薬剤師は医師の処方に基づいて調剤を行うのが主な役割になります。

医師や歯科医師には独立開業の機会が多く、高収入を得るチャンスがあります。薬剤師も薬局経営は可能です。しかし、大規模チェーン店の台頭により、個人経営の薬局は厳しい競争にさらされています。

職場によって年収に差がある

薬剤師の年収は、各職場の特性や役割によって大きく異なります。調剤薬局では、地域医療の要として細やかなケアが必要です。患者さんとの長期的な関係構築が、一定の年収水準につながっています。

製薬会社の薬剤師は、研究開発や臨床試験、MRとして活躍できます。専門性を活かした多様なキャリアパスが存在し、比較的高い年収が期待できます。職場選択時は年収だけでなく、キャリア発展の可能性も考慮しましょう。

勤務地によって年収相場が変わる

薬剤師の年収は、勤務地によっても大きく異なります。最近は都市部よりも地方の方が高給となる傾向があります。地方における薬剤師不足が主な要因です。具体的な数字を見てみましょう。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の年収が高い上位5都道府県は以下のとおりです。

東京都は555.2万円、大阪府は574.7万円と、大都市圏の方が年収が低くなっています。都市部では薬剤師の数が充足しているのに対し、地方では人材不足が深刻なためです。地方の医療機関や薬局では、薬剤師を確保するために高い給与を提示せざるを得ない状況にあります。

薬学部の学費が高い

薬剤師の年収が低いと感じる理由の一つに、薬学部の高額な学費があります。薬学部は6年制であり、一般的な4年制大学と比べて2年間多く学ぶ必要があり、学費も相応に高くなります。私立大学の薬学部の場合、6年間の平均的な学費は約1,035万円にも上ります。

長期的に見れば薬剤師の生涯賃金は決して低くありません。薬剤師の平均年収583.4万円から計算すると、40年間働いた場合の生涯賃金は約2億3,000万円になります。学費の投資は十分に回収できる水準です。

仕事内容と見合っていない

薬剤師の仕事は、人々の健康と生命に直結する重要な役割を担っています。しかし、責任の重さや専門性の高さに比べて、給与が見合っていないと感じる薬剤師は多いです。

近年では在宅医療への対応や多職種連携による患者ケアなど、薬剤師の役割は拡大しています。常に最新の医療情報を収集し、自己研鑽を続ける必要もあります。休日や勤務時間外に勉強や研修に時間を割くことも多いです。業務の拡大や責任の増大が、必ずしも給与に反映されていないのが現状です。

薬剤師の平均年収

実際の平均年収について解説します。厚生労働省の統計データを基に、薬剤師の平均年収を詳しく見ていきます。年代別や男女別、職場別の年収に加え、他の医療職との比較も行い、薬剤師の年収の実態を明らかにしていきましょう。

年代別の平均年収

薬剤師の年収は、年代によって大きく異なります。一般的に、年齢と経験を重ねるにつれて年収も上昇傾向です。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」のデータを基に、年代別の平均年収を見てみましょう。

年齢	平均年収
20～24歳	343.2万円
25～29歳	486.4万円
30～34歳	580.7万円
35～39歳	678.8万円
40～44歳	770.6万円
45～49歳	839.3万円
50～54歳	878.9万円
55～59歳	972.5万円

若手薬剤師にとっては、初任給や20代の年収が低く感じられます。しかし、長期的に見れば着実に年収が上がっていく職業です。キャリアプランを立てる際は、将来的な年収の伸びも考慮に入れましょう。

男女別の平均年収

薬剤師の年収には男女間で差があります。厚生労働省の統計によると、男性薬剤師の平均年収は637.0万円、女性薬剤師は540.1万円です。約100万円の差がありますが、一般的な職業と比べると男女差は小さいです。男女間の年収差が生じる主な要因として、以下のような点が挙げられます。

女性薬剤師は結婚や出産を機にキャリアが中断されることが多く、勤続年数が短くなる傾向があります。管理職に就く割合も男性より低いのが現状です。一方で、薬剤師という専門職では、男女の給与格差が他の職種に比べて小さいという特徴があります。

職場別の平均年収

薬剤師の年収は、勤務先によって大きく異なります。薬キャリエージェントの調査を基に、主な職場ごとの平均年収を見てみましょう。

職場	平均年収
ドラッグストア(OTC併設)	528万円
ドラッグストア(OTCのみ)	500万円
ドラッグストア一律	514万円
調剤	517万円
病院	474万円

表のとおり、ドラッグストア(OTC併設)が最も高く、次いで調剤薬局、ドラッグストア(一律)の順になります。病院は比較的低めです。職場による年収の違いは、業務内容や労働時間、責任の度合いなどが影響しています。

OTC併設のドラッグストアでは、調剤業務や一般用医薬品の販売、健康相談など幅広い業務をこなすため、年収が高いです。病院は公的医療機関が多く、予算の制約から年収が抑えられています。
» ドラッグストアの薬剤師の仕事内容、メリット、デメリットを解説！

他の医療職との比較

薬剤師の年収を他の医療職と比較してみましょう。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」のデータを基に、主な医療職の平均年収を見てみます。

職種	平均年収
医師	1428.8万円
歯科医師	810.4万円
薬剤師	583.4万円
看護師	501.0万円
理学療法士	434.0万円
臨床検査技師	493.0万円

医師や歯科医師と比べると、薬剤師の年収は低くなっています。しかし、看護師や理学療法士、臨床検査技師といった他の医療職と比較すると、薬剤師の年収は高い水準です。

ただし、薬剤師の役割は年々拡大しており、医療チームの一員としての重要性が増しています。今後、チーム医療の推進や在宅医療の拡大に伴い、薬剤師の専門性がより評価され、年収も上昇していく可能性が高いです。

薬剤師の年収が低すぎると感じたときの対処法

薬剤師の年収が低すぎると感じたときの対処法は以下のとおりです。

自分に合った方法を選び、年収アップを目指しましょう。
» 薬剤師を辞めて違う仕事に就く方法

残業や休日出勤を増やす

残業や休日出勤を増やすことで、短期的に収入を増やすことが可能です。多くの薬局や病院では、残業手当や休日出勤手当が支給されます。休日出勤は通常の1.35倍の賃金が支払われます。時給2,000円の薬剤師が月に20時間の残業をすれば、54,000円の収入増です。

資格を取得する

専門的な資格を取得することで、年収アップにつながる可能性があります。薬剤師にとって有益な資格は以下のとおりです。

がん専門薬剤師の資格を取得すると、月額1～3万円程度の資格手当が付きます。認定実務実習指導薬剤師になれば、薬学生の実習指導の手当が支給されます。資格取得は単に収入アップだけでなく、専門性の向上やキャリアアップの面でも魅力的です。興味ある分野の資格に挑戦し、薬剤師としての価値を高めましょう。
» 居宅療養管理指導薬局とは？概要と重要性について詳しく解説

正社員になる

パートから正社員になることで、年収アップが期待できます。正社員になると基本給の上昇だけでなく、賞与や各種手当が付くことで、総合的な収入が増加します。時給2,000円のパート薬剤師が週5日、1日8時間勤務した場合の年収は約384万円です。正社員だと同じ勤務時間でも年収500万円以上になります。

ただし、正社員になると責任も増えます。業務範囲が広がり、時には残業や休日出勤も必要です。自身のライフスタイルと照らし合わせて、正社員への転換が合っているか判断しましょう。

昇進する

昇進は年収アップの有効な手段です。薬剤師のキャリアパスにおいて、一般的な昇進ルートは以下のとおりです。

一般薬剤師から主任薬剤師に昇進すると、月額2～5万円程度の役職手当が付きます。管理薬剤師になれば、さらに5～10万円程度の手当が上乗せされる場合もあります。

昇進には、業務能力の向上や実績の積み重ねが不可欠です。日々の業務に真摯に取り組み、積極的に新しい知識やスキルを習得することが重要です。上司や同僚との良好な関係を築き、チームへの貢献度を高めることも昇進につながります。

地方で働く

地方で働くことで年収アップを実現できる可能性があります。最近は都市部に比べて地方では薬剤師の需要が高く、好条件の求人が多い傾向です。具体的な年収差を見てみましょう。

地域	平均年収
東京都	555.2万円
大阪府	574.7万円
山口県	667.1万円
香川県	652.9万円
茨城県	649.2万円

地方の方が年収が高い傾向にあります。都市部から地方へ転職すると、年収が100万円以上アップするケースも多いです。地方勤務のメリットは年収アップだけではありません。生活コストの低さも大きな魅力です。家賃や物価が安いため、実質的な可処分所得が増えます。

東京で月15万円だった家賃が、地方では7万円程度で済むことが多いです。ただし、都市部に比べて娯楽施設が少なかったり、公共交通機関が充実していなかったりします。家族がいる場合は、子どもの教育環境や配偶者の仕事の問題も出てくるので、よく検討しましょう。

転職する

転職は年収アップの効果的な手段です。薬剤師の転職市場は活況で、条件のよい求人も多く存在します。転職による年収アップの具体例を見てみましょう。

調剤薬局から大手ドラッグストアへの転職で、年収が50～100万円上がったケースがあります。病院から製薬会社への転職では、100～200万円の年収アップも珍しくないです。

転職には慎重な判断が必要です。年収だけでなく、仕事内容や勤務条件、将来性なども考慮しましょう。安易な転職は逆効果になる可能性もあり、十分な情報収集と自己分析を行ったうえでの決断が大切です。
» 薬剤師の転職エージェント・転職サイトの選び方

独立する

薬局を開業して独立することは、薬剤師にとって大きなチャンスです。年収を大幅に増やせる可能性があり、うまくいけば1,000万円を超えることも夢ではありません。ただし、独立には大きなリスクも伴います。慎重に計画を立て、十分な準備が欠かせません。

独立すれば、自分の思い描く理想の薬局を作り上げられます。地域のニーズに合わせたサービスを提供し、やりがいを感じられます。一方で、初期投資の負担は避けられません。店舗の賃貸料や設備投資、在庫の仕入れなど、多額の資金が必要です。

近年は、フランチャイズ展開する薬局チェーンに加盟する方法もあります。経営ノウハウやブランド力を活用でき、比較的リスクの低い独立が可能です。しかし、本部への支払いがあるため、純粋な独立開業よりも利益は少なくなる傾向があります。

薬剤師が年収を上げるための副業と兼業

薬剤師が年収を上げる方法として、副業や兼業を検討する方法があります。専門知識を活かした多様な働き方が可能です。収入源の多角化は経済的安定につながるので、前向きに検討しましょう。
» 薬剤師が1,000万円を稼ぐための具体的な方法を紹介！

副業が可能な薬剤師の働き方

薬剤師が副業として選択できる働き方はさまざまです。専門知識を活かせる仕事から、全く異なる分野まで幅広い選択肢があります。以下に、薬剤師に適した副業の例を挙げます。

非常勤薬剤師は、休日や夜間に別の薬局で働く形態です。時給が高く設定されていることが多く、効率的に収入を増やせます。医療ライターは医薬品や健康に関する記事を執筆する仕事で、在宅でも可能です。

副業を始める前に、必ず主たる勤務先の就業規則を確認しましょう。薬剤師の場合、利益相反や守秘義務の観点から副業が制限されている場合があります。管理薬剤師は副業が禁止されていることがほとんどです。法令遵守と倫理的配慮を忘れずに副業を選択することが重要です。

収入源を多角化するメリット

収入源を多角化することには、多くのメリットがあります。主なメリットは以下のとおりです。

複数の収入源を持つことで、1つの仕事に依存するリスクが軽減されます。主たる職場で収入が減少しても、副業からの収入でカバーが可能です。異なる分野で働くことでスキルアップの機会が増え、新たな人脈も形成できます。多角化によって得られた知識や経験は、将来独立する際にとても有益です。

ただし、収入源の多角化には注意点もあります。時間管理や体調管理が重要です。複数の仕事を掛け持つことでストレスが増加する可能性もあるため、自身の限界を見極める必要があります。税金の申告も複雑になり、確定申告の知識も必要です。

薬剤師としてのスキルが活かせる副業

薬剤師の専門知識を活かせる副業を以下にあげます。

医療通訳は、外国人患者と医療スタッフの間で通訳を行う仕事です。薬の専門用語の知識が役立ちます。健康食品開発アドバイザーは、企業の商品開発チームに参加し、薬学的見地からアドバイスを提供します。

副業を選ぶ際は、自身の興味や得意分野を考慮することが重要です。人と接するのが好きな方なら薬学講師や医療通訳が向いています。研究志向の強い方なら、治験コーディネーターや医薬品安全性情報管理者が最適です。副業を通じて新たな経験を積むことでキャリアの幅が広がり、年収アップにつながる可能性があります。

まとめ

薬剤師の年収は、勤務地や職場、経験年数によってさまざまです。しかし、全体的に見れば決して低くはありません。更なる収入アップを目指すなら、積極的にキャリアアップの機会を探し、自己研鑽に励むことが重要です。専門性を高め、管理職を目指すのも一つの方法です。

副業や独立開業を検討する場合は、リスクと機会を慎重に見極めましょう。法的制限や倫理的配慮を忘れずに、自分に合った働き方を選択することが大切です。薬剤師としての知識と経験は、社会に大きく貢献できる貴重な資産です。自分の価値を正しく評価し、適切な報酬を得られる環境での活躍を目指しましょう。